コロナ禍が始まってから、何回か週刊誌・WEBメディアからリストラや転職にまつわる取材を受けてきました。
そのたびに、私の旧来の友人Aさんの実例を挙げて説明するのですが、いつも「ちょっと特殊な例ですので」と言われてバッサリとカットされているエピソードがあります。
私としてはエピソードではなく、そのエッセンスからは汲み取れることがあるのではないかと思っているのですが、あまりウケが良くないようで…。
私としては40代以上の転職活動をしている人には参考になると思ってますので、どのメディアにもスルーされてしまっている以上は、閲覧数が乏しいながらもここでご紹介したいと思います…。
Aさんはもうすぐ50になります。優秀ですが、いわゆる一流企業にお勤めの~というタイプではありません。優秀であるがゆえに転職経験は何回もあります。
そんなAさんは前職において責任ある立場にあったからか、コロナショックが騒がれ始めて間もなく、責任を取って退職するように促されてしまいました。しかも、部下を何人か辞めさせてから辞めるように、と……。ひどい話ですよね。
当時はそんな状況ですので、次の転職先はなかなか見つかりませんでした。年齢のこともあります。そしてAさんにとっては初めて無職になったらしく、その直前に会った時には「この世の終わりだ」というような顔をして、さすがに落ち込んでいました。お子さんは高校生です。
私が会ったのは、そこから3-4か月経った時です。ずっと転職先を探しているが、引き続き見つからないという話をした後に、「でも、そこそこ忙しくはなってきたし、気が付けば手取りの収入は倍くらいになっている」と。
なんとも同情を引くような引かないようなことを……。
どういうことかと尋ねると、早々にまともに転職先を探すことを諦めたそうです。面接までこぎつけるのも一苦労でしたが、気合いを入れて面接に臨んだところで、すぐに相手のなんとも弱い反応がわかるそうです。
そこで冷静に考えると、確かに採用する側からすると、少々優秀だとしても、いい歳をした人間を雇うのは相当な勇気がいるだろうなと痛感したそうです。そこで「どうせもうダメもとだから」と腹を括り、さっぱりとまともに雇われることを諦めてから事態が好転し始めたそうです。
ではどうしたかと言えば、面接で一通り話したら、先に「実際に中高年を雇うのは勇気がいるのだと思います。もしもモメたら、と思うと」と、相手の心の内を口に出してしまうそうです。たいていの人は「そんなことはないですよ」とは言ってくれず、「え、、そんな、いやいや、えへへ」という反応だったそうです。
そこで立て続けに、「業務委託で、給与は半分で、その代わり目安の稼働時間も半分で、試しに雇ってみてもらえませんか? 必要ないと判断したらすぐにクビにできますし、それでも構いません」と切り出すようにしたそうです。
もちろん「いえ、うちはそういう方針は取ってませんので」という会社が多かったそうですが、なかには「あー、、、いったん内部で相談していいですか?」という会社もあったそうです。
最初に受注できた時は、とっても嬉しかったそうです。そこからもう1社、もう1社と、という具合に足されていったそうです。
もちろん、想定と違うことは多々あります。週1日でいいと言っていた会社が週3日は必要だったり、逆に週3日は来てと言われてもほとんど在宅で済んでいたりと。それでも一切文句も言わず、うぬぼれず、という態度を貫いて、普通に正社員で働いていた時よりもずっと「この仕事を継続受注してやる」と集中していたためにどっと疲れるそうですが、合計の収入も随分と増えているし、慣れればなんてことはないと笑っていました。
Aさんはその後、今年になってからそのうちの1つの会社で正社員となり、その会社とも許可を取って、いくつかの会社には報酬を一段薄くしてもらったうえで非常勤顧問としてたまに稼働しているそうです。短期間であったものの収入は倍になり、その後に転職が決まっても顧問報酬として一部残せたため、コロナ前よりも収入は安定的に上がったと、ニコニコと話していました。
もちろん大前提としてきちんと仕事ができるということがありますが、このエピソードからは今後の働き方について色々な示唆があると思いました。
なんでボツになるんでしょうねえ……。
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